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小音量のときにも本格的に音楽を愉しみたい!

K’sです。 秋の夜長こそ、じっくりと音楽に浸りたいと思う。

このシーズンは空調機を使う必要がなく、一年を通して一番静かな環境で音楽を聴くことができるオーディオ・ファイルにとって嬉しい季節。その反面、オーディオ装置全体のS/Nが要求される季節でもある。

K’sのメイン装置は PC → DAC → 半導体プリアンプ → 半導体メインアンプ であり、アンプは弩級の純A級アンプばかりである。 非省エネの極めであり、時代の流れに逆らっているが、K’sは純A級アンプの音の魅力にひかれており、音楽を聴く時くらいは少し贅沢しても良いかなと勝手に思っている。大きな音量で目を閉じて聴くと、音のバーチャル・リアリティーと言える位、生演奏を彷彿できるダイナミックな音を楽しむことができる。

しかし、大音量で再生できるのは22時位迄であり、それ以降の時間帯はほかの人の妨げにならないように小音量で聴くことにしている。そう言った目的の小音量再生なので、簡易的なデスクトップのオーディオ装置で聴くことではなく、音楽を本格的にじっくり愉しみたい訳です。小音量での再生といっても最高のクォリティーで聴きたいのはオーディオ・ファイルとして譲れないので、半導体純A級アンプと比べて勝るとも劣らない小音量再生を目指したい。

スピーカーは言うまでもなく質量が小さくて初期動作の早いシングルコーンスピーカーか、質量が小さな高能率の同軸スピーカーに限る。アンプは半導体純A級アンプでも、AB級アンプと比べればまだましであるが、それでも、ある程度の音量で再生しないと、音楽が平面的になってしまい、躍動感もスポイルされてしまう。そんな時に真空管のA級アンプが活躍できる。
真空管アンプのも色々な種類があるが、K’sのサブシステムはプリアンプとメインアンプは分け、プリアンプはカソードフォロアやSRPP構成、電源回路は半導体を利用しており、S/Nや小音量時の躍動感も特段問題ない。

メインアンプは2A3や300Bの3極管シングルアンプの音が好みであるが、直結アンプの音の魅力にひかれるので、自ずとロフチン型の2A3シングル直結アンプとなってしまう。しかし、高質な小音量再生において1つ問題が残る。
それは真空管アンプの残留雑音であり、K’sの技量では調整しても0.8~0.9mV程度が限度なので、音が消えて無音になるときに、ふとオーディオ装置で聴いている事に気付いてしまうことがある。すなわちS/Nの問題であり、小音量時のダイナミクスが確保できない。

そんな事を悩んでいる時に「アラルガンド」と言うブランドのアンプ設計者から、残留雑音の低い3極管シングル直結アンプが出来たという朗報が入った。そして、設計者の厚意でそのアンプをお借りして2か月ほど聴かせていただいた。
そのパワ-アンプが好結果をもたらしたので、紹介したいと思う。

設計者からお聞きした内容は以下の通りである。

(開発の背景)
しかるべき装置でじっくり音楽を楽しむのがオ-ディオの王道であると思うが、深夜など小音量で音楽を聴きたいという状況もある。
そんな時に電源ONで一瞬電気が暗くなるような装置、ヒ-トシンクが暖まるまで本調子が出ない半導体超弩級アンプ、大電流ヒーターを要する寝覚めの悪い大型管球アンプは敬遠したくなってしまう。「気軽に高音質を楽しめるアンプが出来ないか?」 これがコンパクトな高性能アンプの開発のきっかけとなった。

(目標)
単に真空管を用いた小型アンプという事ならば巷には海外製を中心に廉価な製品があふれている。
開発にあたっては低価格で、かつ主幹部品はオリジナルに拘り、出来るだけ国産の部品を使用した物作りがしたい。
海外の廉価製品には価格では太刀打ちできないので、音質的には廉価な製品群と大差がないと存在価値がない。 小出力なのでスケ-ル感や臨場感は大型システムに一歩譲っても、ほかの部分では従来システムを凌駕するようなアンプ、また廉価なアンプでは到達しがたい高音質を目指す。2A3ロフチン型アンプは独特の心地よい奥行感、定位感、派手さのない静かな躍動感が特徴なので、この音質を継承したいと考えた。

(回路構成)
2段ロフチン型直結アンプ 双3極管4球構成で、初段、出力段ともに、双3極管のパラ接続のシングル動作とした。 双3極管のパラシングルは出力の増大と言うことより、 内部抵抗を下げることによるダンピングの向上を狙った。 無調整、長寿命といった側面から、出力を犠牲にして最大損失の50%程度で動作させる。電源はFETによるリップルフィルタ-を採用してロ-ノイズを実現する。

(主要部品)
出力トランスは、20個を超す新設計の試作品の中から音質で選んだ、オリエントコア採用のオリジナル品。
その結果5W超級の出力をこなせる出力トランスとなってしまった。
電源トランスも、余裕を持たせた専用オリジナル品を用意、シャシ-は硬質アルミ1.5mm厚、トランスカバ-はSPCC(鉄)1mm厚、フロントパネルは2mm厚のアルミとした。

(製品仕様)
パワ-アンプ MINI-PA99
初段E88CC(6DJ8)、出力段ECC99 いずれもパラ接続による ロフチン型直結アンプ。
残留雑音 0.2mV 以下
最大出力 0.8W/6Ω THD5%(4~8Ωに対応)
利得:約15.5db

このような内容なので、K’sの目的にはぴったりの特別注文したようなパワ-アンプである。

残念なことは MINI-PA99という型番であり、K’sはMINIと言うと何故か代用品に思えてしまう。このアンプはコンパクトではあるが高性能かつ、高品位なアンプなので、何か別の良いネーミングが無いかと考えてしまう。

音質的には設計者の思いである、「心地よい奥行感」、「定位感」、「派手さのない静かな躍動感」どれも見事に達成している。
派手さがないので、ちょっと聴きは何の変哲もない音に聴こえるが、疲れない自然な音であるため、玄人(オーディオ・ファイル)向けの音ともいえる。懸念していた出力も、小音量再生はもとより、普通の音量で聴く時もよほど能率の低いスピーカーでなければ問題ない。

クラシックの中では、ピアノ協奏曲やバイオリン協奏曲がこのアンプの力量を発揮することができると思う。 ジャズ・ボーカルにおいてもボーカリストの実在感があり、息使いの再現も難無くこなすが、押し付けがましくない歌い方が心地よい。ジャズ・インストルメンタルの中からオーディオ装置の粗が目立ちやすいKeith Jarrett の The Out of Townersを選んだが、透明感と躍動感のあるスイングが再現できて気持ちが良い。これもピアノ、ベース、ドラムスのバランスが絶妙で、ややもするとドラムのシンバルがうるさく感じることがあるが、シンバルは大人しく、シンバルの厚みが手に取るように判る、いわば質量感のある高域である。

これらの再現が上手くこなせるのは、このアンプの残留雑音が極めて低いことに尽きる。

小音量においてもダイナミクスが保たれ、帯域的にみると少し濃い中音域に対して、十分な高域の伸びと、低域は適度なダンピングに支えられた、聴いていて楽しい音である。K’sが舌を巻くのは、絶妙なさじ加減の低域であり、これはA級、三極管、直結といった音質を決める3つのキャラクターのほか、少しばかりオーバースペックのアウトプットトランスによるものだと推測している。

こっそり残留雑音を測定したら、なんとボリューム最大で製品仕様を下回る0.13mVであった。
いくら低出力といえ、おそらく真空管パワーアンプの限界に近い値と思われる。
K’sのシステムに繋いだ時の、全体での残留雑音はプリアンプのボリュームを通常聴く位置、パワ-アンプのボリューム最大で0.16mVとアンプ間の相性も良く、99dBの高能率スピーカーを繋いでもノイズは聴こえない。

実はこの残留雑音の低さと、頑丈な作りのMT管に支えられた音は、真空管アンプらしくない音の出方となるので、ノスタルジックな真空管アンプ独特の音を好まれる方には向かないと思う。PCオーディオで再生される方にとっては、可聴帯域外ノイズのフィルターも兼ねることができるので、心地良い音を愉しむことができる。

音が消えるときの静寂な佇まいと、真の無音に入っていくさまは、正に現代の真空管アンプの音であると思う。